安宅和人

2020年02月23日

シン・ニホン感想と大学DS/AI教育のゆくえ

sinnihon

話題のシン・ニホン読了。
AI・DS教育、統計やら、その基礎となる算数・数学教育などを
仕事の一つにしていることもあり、内閣府等のAI戦略を牽引している、
第一人者の新刊は、必読と思ったからだ。

これからの教育系のイベントを開催したり、参加していることもあり、
大きな衝撃というより、教育関係については、ある程度の納得感を
持って読了した。

ただ、おおいに賛同するか、というと8割程度だろうか。
実際のデータに基づく、かなり過激な提案をされているので、
うなってしまう、というところか。

そこはさておき、趣旨としては、日本が将来、生き残るために
「データ×AI」のスキルまたはリテラシーを子どもたちはもちろん、
現役世代も身につけよう、それでもう一度、日本がブレイクの波に乗り、
日本の経済力や景気を、GDPを押し上げよう。
本当にそれが叶うと、いいなとは思う。



ただ、DS・AI教育をリテラシーとして、日本の大学に普及させるにあたり、気掛かりなことはある。

というのは、DS・AI教育というのは、今までの日本のアカデミアにない分野。
DS・AIを使って、いかにドメインの専門分野に生かすかということで、
安宅氏も言われているように「研究者」を作ることが目的ではない。

となると、学問としては少し扱いづらい分野になるような気がする。
実際、DSの新学部を作っていても、いろいろな専門分野の教員の寄せ集めになっている。
いくら受験生の人気のある新学部になったとしても、
DSの専門研究者というのは出にくいわけで、そうなると一時の流行の学部になってしまう気もする。


新学部を作らないにしても、
大学としては、全体予算を大幅に増加するわけにはいかないのだから、
(文科省から特別なプロジェクト予算の応募はあるにはしても)
既存の教員があまりこの新分野について、よく思う気はしない。

誰が、この分野の本当の推進者になるのか。
DS・AI教育を成功させる場合には、学内的には、既存の学部への何らかの配慮が
あえて必要かもしれない。(ジャマをされないように)

また、内閣府も国家プロジェクトとして、支援しつづけたり、
企業側も、就職等でDS・AIスキルの優位性を裏付けるような実績を生み出し続けることも必要だろう。

日本に、アメリカと違い、統計学部が作られなかったような歴史も思い出す。
また根本的に、日本のアカデミアの構造なども、見直しすることも必要かもしれない。

いずれにしても、大学は、特に幹部層は
「これからの学生に大切な教育は、本当はなんなのだろうか」という視点で
それぞれの大学のあるべき姿を考えてほしい。
文科省が、内閣府が言っているから、というのではなく。

そして、政府も、これからの日本のありようを真摯に考えてほしい。



neco5959 at 19:29|PermalinkComments(0)