定員割

2018年02月18日

岩田雅明著「生き残りをかけた大学経営の実践」(感想)

iwata2018i

岩田雅明氏による、著作「生き残りをかけた大学経営の実践」(2018年1月発行)を拝読。
大学職員から、大学経営コンサルタント、そして、現在の新島学園短期大学の学長に
いたるまで、様々な大学の募集広報に携わり、実績を出し続けてきた方なのだが、
私としては、岩田さんの著書を読んだのは初。

新島学園短期大学の学長に2015年に就任から2年の短大経営、教育の実践を
つづった著作。


地方(群馬)における、短大で志願者数を増加させること自体、
全く簡単な話ではない(実際、同短大も2013年度までは定員割だった)。
それを、2013年夏に、同短大のコンサルに入られて以来、
充足を継続されている。

なお、短大は全国で現在304校、内、定員割をしている短大は、204校(67.1%)
その厳しい状況下でも、新島学園短大は、定員充足している貴重な短大である。
日本私立学校振興・共催事業団 平成29年度私立大学・短期大学等 入学志願者動向


著作自体は、難解な用語もなく、すんなり読み通せるが、
上記の厳しい短大経営の背景などを知ると、
「実践」は簡単なことではないことを、特に大学教職員は実感し、
岩田学長の実践が、長年の経験・実績と、しっかりとした理論に裏付けられたものである
ことを改めて、認識することになると思う(岩田雅明オフィス)。


個人的に、感銘したのは、
1.「変革」に現場を巻き込んでいく力量
職員の力を信頼し、その能力を高め、盛り上げていく力。

少ない教職員とはいえ、外部から来て、現場を「変えていく」ことは容易ではないはず。
少ない教職員数で、しかもスピード感が足りない、、、など、色々気づかれた点があるにも
かかわらず、対話を重視して、変革に巻き込んでいくことはなかなか難しい。

2.学長(管理者)であるにも関わらず、自ら現場で実践をすることを厭わない

学苑の広報を高めるために、自らリリース文を書き、マスメディアにアピールしたり、
高校訪問の実践として、従来の学校案内にとどまらない資料作りをされた点。
アピールポイントを押さえた「チラシ」「オリジナル名刺」などを実践されている。

3.数値化
募集、就活等、様々なイベントの数値目標設定および、振返り。
できていれば当然なのだが、管理者が分かっていると、担当者は変わる
「数字」で話ができない教育現場はかなり多いのではないかと思う。

【その他雑感】
組織で、改革を実践し、結果を出していくのに、
「理論」はもちろん必要だが、「人」を「あるべき方向」に動かさないとならない。
それぞれの組織で、様々な事情や力関係がある。
そこを読み解きつつ、戦略的に、絶妙なバランス感覚で、「改革」を成し遂げる
ことは、簡単なことではない。

だが一方で、小さい大学(短大)は、一人ひとりのちょっとした”正しい”努力が
学校の「生き残り」につながるのではないかとも思った。手遅れにならないうちに。

そういう意味で、大学同士がノウハウやスキル共有について、連携ができるといい。
または、大学が、意外に、高校から教わることがあるかもしれない。
(もちろん、反対もある)

NPOカタリバでナナメの関係(大学のお姉さんが高校生に教えるetc)の重要性がうたわれるが、
大学・学校組織間でも、ナナメの関係でのやりとりが、ノウハウ共有を生み出せないか。
あえて競争でなく、協働が、お互いの共存を生み出してもよい。


neco5959 at 13:11|PermalinkComments(0)

2018年02月11日

「私立大学等経営強化集中支援事業」の設問に思う

H27からスタートした「私立大学等経営強化集中支援事業」のH29の採択発表が、
2月5日あった。

平成29年度「私立大学等経営強化集中支援事業」の選定校について

3首都圏以外で、収容定員2000人以下の大学を対象としている。
(本来は、定員充足率が低めの大学の経営支援だということで、
来年度から定員充足率の割合の上限を下げるようだが、、、)

今年は100校程度の採択だが、
これに採択をされたことが、必ずしも、「生き残り」を約束された
わけではないだろう。

補助金をいただくことを引換に、
経営改善への取組みや体制を設問により、オープンにするわけだから、
この事業への申請自体について、異論がある法人もあるかもしれない。

事業にアプライするかはともかく、設問で書かれていることは、
経営者というより、管理者レベル(部長、課長)が
旗振り、組織対応していくものも多いような気がしている。

SWOT分析を実施していますか
経営・財務状況の把握・分析手法等についてのSDを実施していますか。

社会人学生の受け入れ人数が増加していますか。

オープンキャンパスの参加人数が増加していますか。
(それぞれ過去3年の実績平均値と比較/本設問における「参加者」とは高校3年生以外にも、他学年の生徒、児童及び保護者等も含むすべての参加者が対象となり、参加者数は延べ人数でカウントする。 )

この事業の申請業務自体は、職員が対応するわけだから、
この設問チェックするだけでなく、やれていないところは
「なぜ、やれていないのか」「やるには、どうしたらいいか」
を自分事として、考えられていることが求められている。

作成する資料が、上位管理者に実績をとがめられないようにするために、
テクニックを駆使する、小賢しい管理者がいるものだが、
そこを管理者は見抜かないとならない。

たとえば、上記のオープンキャンパスの参加者数は、単年度でなく
少なくても、複数年度のレンジで、しかも複数学年や保護者、子どもも
チェックしろと言っている。

さらに、加えれば、エリア外で、応募できない大学の職員は、
これを、自学でやれているのかどうかを、本気で検証するべきであろう。



neco5959 at 18:50|PermalinkComments(0)

2018年01月20日

大学が破綻時の職員の身の振り方→既に書いてあった

大学が破綻した時、職員の身の振り方は?」の続き。

今日(2018年1月20日)も読売新聞から、下記の記事が掲載。
大学入試シーズンで、教職員はピリピリモードであるはずなのに、本当にあおる。

経営難の私大、助成金減額へ…赤字連続5年など
経営難の私大、助成金減額へ…赤字連続5年など
1/20(土) 6:05配信

 文部科学省は、私立大・短大を運営する学校法人が著しい経営悪化に陥った場合などに、法人への私学助成金を減額する新しい仕組みを2018年度に導入する方針を決めた。

 財務情報を開示していない法人の減額幅も拡大する。18年度は18歳人口が再び減少局面に入り、経営環境の一層の悪化が見込まれるため、経営改善が進まない法人には撤退を含む抜本的な対応を促す。

 文科省はこれまで、特色ある研究や地域連携、大学の国際化などに積極的な法人には助成金を加算する一方、大学の大幅な定員割れや不正経理などの不祥事の際には減額を行い、改善を求めてきた。

 18年度からは減額要件として、従来の「定員割れ」に「5年程度の連続赤字」「教育の質が低評価」を加え、すべて該当する場合はさらに助成金を削減する。


学校教職員は、マスコミ報道で、
「自分の職場、大丈夫か」
「いざとなったら、自分は??」
と心配になっているはず。

でも、本当に危機的な情報は、幹部しか共有しないしものだし、
(いくつもの銀行の破たんの時だって、そうだった)
危機的な情報を目にしたところで、
「でも、そんな簡単にはつぶれないよね」とか
「でも、この年齢じゃ、このスキルじゃ、転職するより、
いざとなるまで、ここにいた方がマシ」と考える傾向がある。

「こうなるとわかっていたのに、なんで文科省は大学の設立を許していたんだ」
とかいう人がいるけれど、分かってやっている。
”私学は、18歳人口急増の調整弁”ということを、聴いたことがる。

なので、私学事業団は、すでに、大学破綻のことを既にきっちりとした
報告書を10年以上前に書いている。
そこに、ご丁寧に、大学が破綻した場合の、教職員の転職についても
明記している。

5)教職員の転職支援方策の検討     
経営困難な学校法人や破綻する学校法人が発生することにより、専任又
は非常勤の教職員の整理解雇の増加が予想される。やむなく経営破綻や学
校廃止に至った場合の教職員の転職先の斡旋等については、学校法人の経
営者の責任において努力すべきである。高度な教育研究実績を有する教員
や事務処理能力・経験等を有する職員が人材として有効に活用されず失職
することは、社会的にも損失であると言えよう。
ついては、私学事業団が私学団体や各分野の専門家等と連携し、私立大
学の教職員の人材情報を取りまとめ、データベースとして整備し、人材を
必要とする学校法人等に提供することで、教職員の転職支援ができる仕組
みを検討することが望まれる。
(私立学校の経営革新と経営困難への対応― 最終報告 ―
平成19年8月1日 
日本私立学校振興・共済事業団
学校法人活性化・再生研究会 P30より)

急に騒ぎ出したわけでなく、
10年以上待って、話し出した、わけである。

どんな人材なら、受けてもらえるか。
>・高度な教育研究実績を有する教員
>・事務処理能力・経験等を有する職員

でも、その情報は、当該大学の人事担当が事業団に提出するのか?
また、登録先の、事業団が作る人材データベース。

一番ベターなのは、なんとか、
職員が学校を守りきる=職場を存続させること
ではあると思うが、

そういう意味で、幹部レベルだけではない、
下のレベルでの、大学間連携が必要になるかもしれない。




neco5959 at 17:55|PermalinkComments(0)

2018年01月16日

大学が破綻した時、職員の身の振り方は?

yomi171231

読売2017/12/31「私大112法人 経営難」
読売2018/1/12「私立大、独自研究に活路」

12月下旬、私立大学事業団より、私立大・短大の経営状況の分布が
公表された。全国660法人がその対象。

2019年度末までに破綻のおそれ 21法人
2020年度以降に破綻のおそれ 91法人
以上で、112法人。

そのほか
経営悪化の兆候がみられる 175法人

年末の読売トップ記事。
特に大学関係者は、年の瀬に、あらためて事実を突き出され、
あまり気分がよくなかったに違いない。

よく書き込みがされているのが、「大学名の列挙がない」。
そこまでは、新聞社が自粛したということである。

こんな数字だろうと思ったと、大学関係者がうそぶいたとしても、
国もマスコミも、既に、112法人の大学を”そういう目”で見ているわけである。
一般市民に公表しなかっただけ。

112法人は、本当に破綻するのか。
それとも生き残らせるのか。

その学校に所属する学生たちは、他大学に転学するかもしれない。
それは、比較的しっかり考えてもらえるところだろう。

しかし、教職員は?

教員は、その研究力で、他大学に転職できるのか?
職員は、どのスキルで、転職できるのか?
そのときの年齢制限は?

うまく経営が行っている大学であっても、
そんなに、大勢の職員は引き取れない。

仮に、統廃合されたとして、
実際、職員を受け入れてもらった場合でも、
立場の弱い側の大学職員は、肩身が狭い、もしくは、肩たたきか。
そんなの、民間企業の統合事例で、よくある話。

いま、銀行員ですら、転職に苦労する時代。
大学職員のつぶしは、民間に効くとは思えない。

しかもオリンピック開催前に分かる。



その流れでみたときの、1月12日の読売記事。
私立大学ブランディング事業の取組みが書かれている。
記事中で、東京理科大、新潟工科大、吉備国際大、近畿大が取り上げられ、
表としては、北海道科学大、東北公益分科大、法政大、多摩大、
金沢工大、松本大、京都産業大、徳島文理大、福岡歯科大、西九州大学短大

と、掲載されている。

記事の最後にコメントとして、倉部史記さん。
「大学の生き残りには、学術界に加えて、社会からどう評価されるかも大切。
ブランド力があがれば、卒業生からの寄付や企業との共同研究も期待できる」

「何が本当の強みなのか」
「何が社会に時代にアピールできるのか」

もう、残された時間はあまりない。
あえて、toggetter と、過去記事をリンクしておく。

「私大112法人が経営難で21法人は2019年末までに破綻する恐れ」廃校、統廃合…一体どうすべきか




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neco5959 at 13:55|PermalinkComments(0)